case.06 脳腫瘍(のうしゅよう)
脳腫瘍について
脳腫瘍とは、脳に発生する腫瘍の総称です。脳に発生する腫瘍以外にも、髄膜や脳神経、下垂体由来の腫瘍のことも指します。
脳腫瘍には、良性と悪性の2種類の腫瘍があり、良性の腫瘍は、周囲組織との境界が明確で全摘出を目指して手術を行います。増大の速度は遅く、主な影響としては、脳の圧迫が身体に与えることがあります。
悪性の腫瘍は、増大速度が速いことが特徴で、周囲組織との境界が不明確な腫瘍のため、手術での完全摘出が困難です。多くの場合、手術の後に放射線治療や抗がん剤による化学治療を行います。
当院での治療方法
良性腫瘍・悪性腫瘍ともに、患者様の年齢・家庭環境・お仕事などを考慮して、最適な予後とQOLを得られるように、オーダーメイド治療を心がけています。年間10~20例の手術を行っています。
開頭術に際しては、術前にMRIによる機能的マッピング、ファイバートラッキングなどを駆使し、複数医師にてシミュレーションを行います。また術中には理事長滝澤が1988年から開発にあたり世界中の特許取得歴のある、三次元定位的ナビゲーション装置を併用して正確な手術を心がけています(詳細はこちら)。さらに術中の出血量を極力減らすために、可能な症例では、術前に血管内治療により腫瘍栄養血管塞栓術を施行します。
下垂体腫瘍の手術に際しては、片側の鼻孔からの経鼻的経蝶形骨洞的腫瘍摘出術を第一選択としています。その際に、内視鏡(硬性鏡)を併用しています。最近、日本において脳外科のトレンドは内視鏡単独手術ですが、年間症例数のとても多い施設を除いては、非侵襲的などのキャッチフレーズは必ずしも当てはまらないと考えています。より短い手術時間、正確な腫瘍摘出、輸血を避けるなどの観点からは、従来の経鼻的顕微鏡手術に内視鏡の併用が理想的と考えています。
当院での脳腫瘍手術症例数は多くはありませんが、その理由の一つとして、病気の性格と年齢などを考慮して、あえて積極的な治療はしないで、定期的な画像診断での経過観察をお勧めしている方が少なからずおられるからです。
開頭手術ではなく、ガンマナイフ治療などの定位的放射線外科治療にてコントロール可能な症例には、その利点と欠点をご理解いただいたうえで、第一選択としてお勧めすることもあります。その際には、ただ単に他院に紹介するのみではなく、提携するガンマナイフセンターにて当院の医師が治療計画に参画し、治療当日にご本人ご家族様に治療内容についてご説明させていただき、治療後のフォローアップも当院にてさせていただいております。また開頭手術の際にも、後日、定位的放射線外科治療を併用することを考慮して、敢えて腫瘍の全摘にこだわらず、術後の後遺症を減らすことに重点を置いています。